逢うも逢わぬも

    眠気のなかで

2021.12月下旬及び2022.1月上旬 本のこと

 アタリもあれば、ハズレもありというのが本の全てであるが、12月下旬から1月上旬にかけて読んだものの中で、人にお薦めしたいのは、このあたり。

 ロンドンを舞台にして、しかも、有色人種のロンドンという妙味と警察もののケレン味のバランスがとてもいい。しかも、ロンドン市長の殺人事件という縦軸よりも、警察官と被疑者との関係といった横軸で読ませる。そこがとても気に入った。

 年末に大阪にやってきた娘に勧めたのだけれど、横軸の良さが分からなかったのだろうか、2巻まで読んで「ま、いいっか」と言って終わりにされてしまった。『僕のヒーローアカデミア』もいいのだけれど、もうそろそろ、こういう物語の良さも分かってくれないかな。

 天神橋筋商店街には、把握しているかぎりで古本屋が5〜6軒はあり、時間がある時に覗いてみる。その際に見つけたもの。大雑把にいえば、霊感のようなものが強いノンフィクション作家の体験を記したものということになるのだろうが、年老いて死者が親しいものと感じられる人の感覚がうまく描かれている。旅先の見知らぬホテルの一室で読むということであれば、かなりハマるのではないか。

www.keibunsha-books.com

 真顔でお薦めしたいのが、この『馬馬虎虎 vol.2』。タイとラオスをたった10日間旅行した筆者が書いた旅行記だけれど、そのような旅行でもここまで書けるのかと驚いた。特別なことをしているわけでもなければ、大げさに書いているわけでもない。しかし、実に読ませる。距離感がいい。遠くを見すぎるのでもなく、かといって近寄りすぎるのでもない。平温的に記述していく中で、ユーモアが滲み出てくる。笑わせようとしているのか、それとも、単に当惑しているだけなのか。書きぶりが絶妙としか言いようがない。

 もう1ついえば、この本には出版社が記載されておらず、ISBNも見られないことからすると、自費出版かそれに近いものなのではないかと思う。私は、この本を大阪のFolk old book storeという本屋軒古本屋軒カレー屋で見つけたけれど、かなりしっかりと目につくところに置かれていた。また、上記のリンクのとおり、京都の恵文社のサイトでも、この本が紹介されている。しっかりと確かな才能を見つけて読者に届けてくれる。

 

 風呂と戦争をかけ合わせるというセンスがいい。食い足りないところもあったのは否定しがたいが、戦争体験者の話を直に聞いていくという趣旨の本ではないのだから、それを期待すべきではないのだろう。最後の高座海軍工廠の話は、ちょうど『眠りの航路』を読んだ直後であったものだから、とても興味深かった。