逢うも逢わぬも

    眠気のなかで

2023.4.23 許された祈り

ものごとには、明らかになるべき瞬間があって、だから、例えば、3月に京都を再訪し、君島大空を紫明会館で見たときのことは、今、記憶にあっても、おおよそタイミングが違うし、その時のことをうまく書けない。 今書くことができ、そうしようと思うのは、そ…

2023.02.22 人の営みボット

どういったわけで、そういったことになったのかを最初から辿ってみると、学校に行かなくなった娘のことがあり、ホールデンのことがあり、そういえば、村上春樹の『ダンス・ダンス・ダンス』のユキもいたということがあり、そうして、娘にあれを読ませてはど…

2023.02.18 ライ麦畑で右往左往

こう書くと、冒瀆以外のなにものでもないような気もするし、自分でもどうかとは思うが、娘が学校に行かなくなって1か月を過ぎたところで、「ホールデンの親も大変だっただろうな…」とふと考えてしまうことがあって、だから、親目線で『ライ麦畑で捕まえて』…

2023.1.23 新しい生活

www.youtube.com 数えたほうが良いのか、それとも、ぼんやりと幾つかの記憶をないまぜにしてしまったほうが良いのか、私にはもう分からなくなっているけれど、大阪で暮らしていた間は、君島大空が関西にやってくる度に、君島大空のライブに行っていて、だか…

2023.01.01 正月とヤクザ映画

横浜に戻ってきてしまった。そういう予定だったのだから、文句をいう筋合いはないのだけれど、それにしても、チューニングがうまく行かない。横浜、寒いし。 関西のことについては、沢山書かなければならないことが残っているのだけれど、周波数を合わせるた…

2022.9.30-12.6 安心僕らは旅に出る計画

www.youtube.com 娘のことで学校に呼び出されたのは、9月30日のことだった。学校にいくと、校長と担任教師が校長室に座っていて、学業が不振で叱られた。親としては、謝るほかないので、謝ったけれど、担任教師が娘の心を削るような言葉を発していたのが気に…

2006.11.10/2022.11.15 はじまりのつながりの行方

www.youtube.com はい、続けて次回。 昨日のことになるのだけれど、私としては、8年ほどの歳月をかけて辿り着いたところに、ひとまずのところ、辿り着いた。ワールドカップ2回分の歳月。長かった。 そうして、夜、みんなでひと通り飲んだ後、梅田から歩いて…

1988の頃、そして、2005の夏のこと

www.youtube.com 川﨑の武蔵小杉のことで思い出すのは、幹線道路と工場とフランチャイズのレストランと個性のない日当たりの悪い建売住宅と、私が暮らしていたような灰色の中古マンションのことで、私がサバービアの憂鬱という言葉を知る前から、あの頃、そ…

2022.11.5 そういうものか

今更ですか、と言わないで欲しいが、カート・ヴォネガットジュニアの作品には「そういうものだ」という有名な台詞が多用される。この言葉のニュアンスは、作品全体に支えられ、その文脈ごとに様々な色彩を帯び、だから、「そういうものだ」はそういうものな…

2022.10.22 ビートルズ解散私説

そもそも恋愛という感じではないし、今となっては尚更なのに、若い男の子に急に呼び出され、「どうしましょうか…」と言われても、何も言えることはなくて、ただ、別れるのであれば、それを背負うしかないと伝える。 ずいぶんと酔って部屋に戻ってきて、ビー…

2022.08.09 向こう側からの風景

www.youtube.com フジロックが終わって、10日ほど経ってしまったけれど、苗場には行けなくて、代わりに、友人が来ていたので、金曜日と土曜日の午前中は京都に行っていた。京都から戻ってきて、配信を見ながら、ふと思い出していたのは、最初に行った時のこ…

2022.6.25 蓮の花の咲く前に

もう夏もここまで来てしまったけれど、6月の終わりに京都に行ったことを思い出していて、その頃はまだ、今ほどは騒がしくはなく、時間があったということもあって、休日に何をしようかと考える余裕もあった。その日は、東福寺で蓮が咲いているとツイッター…

2022.6.24 夏至ちかくの千日前ユニバース

www.youtube.com 12月の半ばに象眠舎を見て以来ということになるので、冬至の頃から夏至の頃とひっくり返した時期になって、ふたたび千日前ユニバースに向かっていた。ネバーヤングビーチのライブを見るためだった。 実をいえば、その週の月曜日に半径50セン…

2022.6.29-6.30 不穏さだけを残して消えた街

若い友人に本を薦めたことは、この前書いたばかりだが、薦めた本の中に、何を思ったのか、阿部和重の『インデヴィデュアル・プロジェクション』が含まれていた。面白かった記憶があったからだと思うのだが、それにしても、1回読んで、そのままになっている…

2022.6.21 夏至に至るまで

関東で生まれ育ち、その後ずっと働いてきた者からすると、大阪の日の長さは驚くほどで、このところは、19時近くまで明るい。もちろん、梅雨明けのこの時期、沖縄にいくと、もっと日が長くて、20時近くまで明るいというのはあって、さらにいえば、例えば、ロ…

2022.5.28 大正区から西成区まで

土曜日の朝がやってきて、明るい。その日の予定は考えていなかったが、こんなに晴れた日なのに何処にもいかないのももったいない気がした。 大阪環状線の大正駅で降りたのは、ちょうどお昼過ぎで、その日は、オリックスと何処かの野球チームの試合がされてい…

2022.6.18 南印度カレー問題

住んでいるところから少し歩いた場所に南インドカレーで有名なお店があったので、では、行ってみようか、と考える。先週の終わりから湿度ががくんと上がり、何もしていないのに、じわっと汗ばむ。少し歩くだけで、汗がにじむ。 南インドカレーの難しさという…

2022.6.10 叔父から甥に薦める

一時滞在であるのだから、どの程度の距離感で人と付き合っていくのかというのは、難しいし、さらにいえば、親子ほどの、少なくても、叔父と甥ほどの年齢差がある人たちと付き合っていることが多いので、そんな若い人に飲みに行こうと誘われれば、少し戸惑う…

2022.5.22 丸太町、北大路、東京、鞍馬口、大阪

www.youtube.com ゴールデンウィークの京都や奈良は、1日を除けば、呆れるほどに晴れきっていて、晴れた日や強い日差しが好きな私は、それだけで恵まれていると感じながら、妻や娘と京都のモーニングや奈良のスペイン料理を食べ、大阪に戻ってきたのだから…

2022.4.20 深く穿たれた穴

レイモンド・チャンドラーの『長いお別れ』は、記憶では、渋谷の大盛堂書店で買ったことになっていて(正確ではないかもしれない)、清水俊二訳だった。村上春樹訳が出たときに、Amazonでハードカバーのものを買ったのだけれど、最初の部分、つまり、テリー…

2022.5.8 彷徨えるカレー店

当時はそう考えることも少なかったけれど、新型コロナウィルスの蔓延防止等重点措置が講じられていたあの冬は暗くて寒かった。 冷え冷えとした風が吹きすさんでいた日の夕暮れに「肉すい、食べたい…」と歩いていったら、あの肉すいの店が閉まっていた日があ…

2022.4.23 行き止まりの格好

ゴールデンウィークの旅は京都と奈良にした。 ホテルとレストランの予約も終え、加えて、どの道を歩くかの目処も立てたところで、ふと何を着ていくのかと考えて、愕然とした。大阪にやってきたが冬だったものだから、気づくと、手持ちの服は季節外れになって…

2022.4.1-3 それぞれの街のそれぞれの桜

大阪にやってきたのが冬で、月に1回ほどは、京都に行って戻るという生活を送っていたからなお一層そう感じたのかもしれなけれど、桜がちょうど満開の時期に家族と京都を訪れてみると、街は急に装いを変えて、よそ行きの佇まいといえば良いのだろうか、祝祭…

2022.03.02 それぞれの街のそれぞれの毛布たち

www.youtube.com 京都の桜に見とれていたら、時間が経ってしまった。だから、フランス語でいうところの大過去の時制を用いることになる。 おおよそ1ヶ月半前、ホームカミングスを見ようと思った時、京都という街のことを考えていた。もちろん、ビートルズが…

2016.10.09-2022.3.6/20 ホームカミングスまでの遠回りの道

www.youtube.com 今はもう信じられないようなことだけれど、妻は、年に1回か2回ほど海外に出張することがあった。2019年までのことだけれど、とても遠い日々のことのように感じる。 妻が海外出張に行ってしまうと、1週間ほどは、私と娘だけの生活になるこ…

2022.3.18 スタローンのアメリカ

シュワルツネッガーがロシアに呼びかけたというニュースを見て、「そういえば、シュワルツネッガーがロシア人を演じた、あの映画は何だっただろう」と考えた。その時思い出したのは『ロッキー4』のことであったのだけれど、調べてみると、全くの見当外れだ…

2011.03.19 凡庸な悪の風景

あの頃はまだ、娘は2歳だった。生まれてすぐの夏に申し込んだ保育園からは、3歳までは受け入れるが、それ以降は他の保育園を探して欲しいと言われており、2歳の冬もまた認可保育園に申し込んだものの、第9希望まで認められなかった。法律では、希望があれ…

2011.3.11 あの日のこと

あの日、地震が起きてすぐに職場を出たのは、娘が生まれた時に決めていたことだった。災害があれば、何があろうと、娘を優先すると決めていた。神戸大震災の時、他の人を助けていて、娘を助けに行くのが遅れた、それで娘を失ったというわけではないけれど、…

2022.03.05 せやな

午前10時30分過ぎに目を覚ましたのは、横浜にいる妻から電話があったからで、唐突に横浜から電話があると、やはり不安な気持ちになる。何もなければ、そんな時間に連絡は来ない。とはいえ、いつもと同じように、不安は杞憂に終わる。 そういえば、2週間前の…

2022.2.28-3.4 いつしか雨、そして、晴れ

www.youtube.com 思い返すと、冬の間は、驚くほどに晴れが続いて、空気は乾燥して、かなり辛かった。そういえば、『細雪』の何処かで、関東の冬は乾燥して埃っぽくてかなわん、みたいな台詞があって、関東にいる時は、そうかもしれない、と思っていたけれど…